漢方鍼治療と臨床

 臨床研究にあたり・・・
 中国四千年の歴史。その歴史とともに人々の健康を脈々と守り続けてきた鍼灸治療を正しく理解している人は少ないと感じます。私がはじめて鍼灸治療を体験したのは28歳の時(失明宣告を受けたために盲学校の理療科に在学中)でしたが、それも伝統を受け継いだ鍼灸治療ではありませんでした。卒業後、自分自身で東洋医学についてもっと掘り下げて勉強したいと考え、古典鍼灸医学を学ぶ研究会に参加するようになってはじめて鍼灸の教育プログラムのなかで教わったこと以外にもっと勉強すべきことが残されていることに『気付いた』のです。鍼灸専門学校で行われている多くの教育は明治政府による漢方医学廃絶の動きの中から生まれたものであり、真の伝統医学(古典医学)を継承しているとはいえません。
 以下に私の研究発表の概要を記しますが、興味があれば研究・講義資料をご一読いただき漢方鍼治療をご理解いただければ幸いです。

1-1 実技研修の基本とその手順(名古屋漢方鍼医会)

 「医はアートなり」と言われます。特に我々が行う鍼灸治療は「術」が求められます。そこで、会員全員が一定の共通認識のもとに実技研修が行えるように手引き書を作成しました。

実技は、小里方式(東洋鍼医学会設立時の副会長であった故・小里勝行先生考案)で、三人一組で手から手への指導を行います。その方法は、一人がモデル患者となる。一人が脉を診る。一人が鍼を行う。そして、お互いの技術の向上をはかるのであります。

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1-2 脉診の基本とその手順(名古屋漢方鍼医会)

 脉診流とも言われる経絡治療(漢方鍼治療)において、脉診の果たす役割は大きい。そこで、診断に必要な季節の脉・胃気の脉・五臓正脉・菽法脉及び基本脉状について、一定の共通認識のもとに研修を進める様に資料を作成しました。脉診は四診法の一部であり、脉所に軽く指をあて、「手」を通して気血の動勢をうかがいます。無理に脈を診ないで素直に感じることが大切であります。

寒い(冷え)時の脉、暑い(熱)時の脉、安静時の脉、興奮している時の脉、痛みに耐えている時の脉、浅い病の脉、深い病の脉等々感じるままに・・・。

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2-1~3 気血・津液と臨床

 気が働き作用して健康を保つことが出来る。気が停滞鬱滞することにより血・津液の病気となる。なんと言っても人体の血管の総延長は10万キロ(地球約2周半)と言われ、身体の70%は津液(水)で構成されているのですから、病はこれらの代謝障害により発症すると言っても過言ではありません。さらに、気血・津液の正常な営みを保つためには、名有りて形無き「心包・三焦論」と、「水火陰陽論」も欠かすことの出来ない概念であります。

 東洋医学の五行理論(木・火・土・金・水)と同じ考え方は、西洋では「地・水・火・風・精気(霊気・星気)」があり、インドでは「地・水・火・風・空」があり、ネイティブアメリカンの考え方では「東・西・天・地・南・北」があります。洋の東西を問わず医学の上で、人類が自然と共に生命を営む為の知恵の学問として水・火は欠かす事が出来ないものです。これが、人体は小宇宙と言われている所以であります。』

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3-1 四診法(望診・聞診・問診・切診)

 四診法の中でも、問診を中心とした内容です。
 昔は、病を治すのは国の政治を司るものだと考え、医者(鍼灸師)を国史と言い、身体を宇宙的規模で対極的に観察診断し、気の歪みを調整する事が目的でありました。それ故に、治療家は五感(第六感が最も重要な時も・・・)をとぎすまし、「感じる心、感じる手」を養う必要があります。
 現代医学は、検査機器を活用し、データに基づき局所的にミクロに診断が行われます。東洋医学では、陰陽論を基盤として、その異常が表にあるのか裏にあるのか、寒なのか熱なのか、虚なのか実なのか等を観察し、そして又それはどこの臓腑経絡の変動によって起こっているのかを脉診や腹診によって見極めます。従って、現代医学と東洋医学では、診察診断において、求める内容が違うのです。

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3-2 体表観察と臨床

 鍼灸治療は、宇宙の偉大なエネルギー(村上和雄先生はヒトゲノム解読で「サムシンググレート」と表現しました)を、鍼や灸を使い術者の手を媒体として、病体を健康体へ導くことにあります。そのために、体表観察は重要なウエイトをしめます。
 鍼灸治療は、手に触れることのできない「見えない気」の世界で語られているために、再現性のない非科学的な医学だといわれているが、津液を中心に観察することで、気といううものを「見えない気」から手に触れることのできる「見える気」として捉えることが出来るようになるというのが私の考えです。そして、五臓六腑・気血・津液の変動を観察し、治療(衛気営気の手法)に結びつけるのが、体表観察の目的です。

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4-1 五味(水穀・飲食)と悪血

 湯液治療ではよく使われる悪血(オケツ)ですが、鍼灸治療ではほとんど着目されません。しかし、生体の生理作用を営む「気・血・津液」の変動により悪血は形成されるのです。そこで、鍼灸治療では悪血をどのように考え、治療して行くかということも重要であります。また、「医食同源」と言われているように悪血は、食生活との関わりも深く、飲食(東洋医学では水穀と言われる)と五味(酸味・苦味・甘味・辛味・鹹味)との関係も見逃せません。

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4-2 急性消化器疾患と肝実・悪血

 第二次世界大戦の敗北、そして、貧困による栄養失調時代から立ち上がる為に日本の栄養学はカロリー栄養素が主体となり代謝栄養素を忘れてきました。その結果、高カロリーの栄養失調時代となり、生活習慣病(高血圧症、脳梗塞、心臓病、糖尿病、等々)を生み出したのです。

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4-3 消化器疾患

 胃は「水穀の海(食物の海)」「五臓六腑の海」などとよばれているように、水穀を消化して小腸に運びます。小腸はそれをうけて栄養物質を脾におくり、粕を大腸におくります。
 脾は中州脾土は中央というように、脾は五臓の中央に位置し、小腸より運ばれた栄養物質を胃の気(気血・津液・衛気・営気)として、経絡を介して全身に送り出し、自分も含めて他の四蔵を養い、生命活動の原動力となります。

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4-4 脾の病症と治療

 おもな病証としては、下痢、便秘、胃痛、胃部膨満感、腹痛、腹部膨満感、胃炎、胃潰瘍、胃下垂症、十二指腸、潰瘍、膵炎、腸炎、虫垂炎等々があります。ここでは、脾・胃を中心に研究をしたものでありますが、他の五臓との協調関係が重要であることは言うまでもありません。特に心陽と腎陽(いずれも身体を暖めるエネルギー)は、脾胃の正常な生理作用を保つためには見逃すことが出来ないものです。

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5-1 肝腎かなめと腰痛療

 腰痛の原因は様々です。
 内臓の病変では、腎臓結石、胆石、胃・十二指腸潰瘍、糖尿病、子宮筋腫、子宮後屈など。運動機疾患では、椎間関節捻挫、仙腸関節疾患、過労、特定作業、不良姿勢などによる筋や靱帯損傷など。骨の変性では、椎間板ヘルニア、変形性腰椎症、脊椎間狭窄症、脊椎分離症、骨粗鬆症など。話をわかり易くするために西洋医学的病名を羅列しましたが、慢性急性を問わず腰痛は鍼灸治療がもっとも適応する疾患の一つです。
 漢方鍼治療では腰痛を「気・血・津液」いずれの過不足によって起こったかを八綱理論を交えて証立てしていきます。

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5-2 腰痛と漢方鍼治療

 腰痛は肩こりとともに慢性急性を問わず鍼灸治療の最適応症です。ところが、来院する初診患者の多くは整形外科、接骨院、カイロプラクティックなどの治療を経験して最後のよりどころとして鍼灸治療に来院する方が多いのです。
 鍼灸治療で本当に腰痛が治るのか、鍼の痛みをこらえ、灸の熱さを我慢しなければ効果はないだろう、など様々な疑問と不安を抱えて来院するのが現状です。しかし、受診後にその認識の間違いに気付かされるでしょう。

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6-1 寒病症(冷え性)の臨床報告(陽虚証の臨床研究)

 ペットボトル症候群などと言われて久しい。当院でも、数年前より、寒病症(冷え性)を訴える患者が、若い女性を中心に来院するようになりました。現代社会におけるストレス、無理なダイエット、薬害等々、その原因はさまざまです。手足が冷えて眠れない、生理不順、不妊症、慢性的な下痢・便秘など冷えに関わる病証は多く見受けられます。

>>「病症(陽虚証)の臨床研究」PDFダウンロード

6-2 陽虚証と剛柔選穴

 冷え性に対する治療として何とか良い方法がないものかと思案し、古書を読んでいると、ある治療体系に遭遇したのです。「陰経と陽経の五行配当が違う、しかも相剋関係に成っている、之に理由が有るはずだ!」。そう思って何度も読み返すうちに、これこそ私が最も苦手とする冷え性の改善に使える治療法であるとの考えに至りました。

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7- 1  精気神論

 WHOの健康の条件にも挙げられている「精神」の安定。東洋医学ではこの精神を「精」と「神」に区分しています。 精は腎臓を主り、神は心臓を主り、それぞれ自然界における「水」と「火」の関係を保ちながらバランスを整えています。道家では精気神の三者を三宝あるいは三気ともいい、生命現象の営みとその変化の根本であると重要視されています。これら三者の関係は密接で、精が無くなったものは病気となり、神が無くなったものも又病気となります。

>>「「精気神論」について 」PDFダウンロード

《参考・引用文献》※以下は研究にあたり参考・引用させていただいた著書です。
『臨床に生かす 古典の学び方』 池田政一著 医道の日本社 
『臓腑経絡からみた薬方と鍼灸』 池田政一編著・監修 漢方陰陽会
『伝統鍼灸治療法』 池田政一著 医道の日本社
『素問ハンドブック』 池田政一著 医道の日本社
『霊枢ハンドブック』 池田政一著 医道の日本社
『難経ハンドブック』 池田政一著 医道の日本社
『傷寒論ハンドブック』 池田政一著 医道の日本社
『金匱要略ハンドブック』 池田政一著 医道の日本社
『古今腹証新覧』 小川新・池田太喜男・池田政一 共著
『日本鍼灸医学(経絡治療・基礎編)』 経絡治療学会編纂 経絡治療学会
『日本鍼灸医学(経絡治療・臨床編)』 経絡治療学会編纂 経絡治療学会
『医経解惑論』 内藤希哲篇
『現代語訳・黄帝内経素問』 南京中医学院医経教研組編 東洋学術出版社
『現代語訳・黄帝内経霊枢』 南京中医学院中医系 東洋学術出版社
『漢方鍼医』 漢方鍼医会編
『漢方鍼医基礎講座』 漢方鍼医会
『選経選穴論と脉状診』 漢方鍼医会 福島賢治著 
『漢方用語大辞典』創医会学術部編 燎原
『難経の臨床研究』 勝浦甚内著 
『難経本義大鈔』 森本昌敬斎玄閑著 漢方鍼医会編
『やさしい中医学入門』 関口善太著 東洋学術出版社
『中医学の基礎』 平馬直樹・兵頭明・路京華・劉公望監修 東洋学術出版社
『中医診断学ノート』 内山恵子著 東洋学術出版社
『啓迪集』 矢数同盟著
『脉法手引草』 山延年著 医道の日本社
『診家樞要』 滑伯仁編纂 遠藤了一訓下 オリエント出版社
『増補新鐫・脉論口訣『 曲直瀬道三著 経絡治療学会刊
『わかりやすい経絡治療』 福島弘道著 東洋はり医学会編
『経絡治療要項』 福島弘道著 東洋はり医学会編
『経絡治療学原論』 福島弘道著 東洋はり医学会編
『難経の臨床考察』 福島弘道著 東洋はり医学会編
『杉山流三部書』 東洋はり医学会編
『正しい鍼灸術への道 福島弘道会長巻頭言集』 東洋はり医学会編
『図解 鍼灸実用経穴学』 本間祥白著 医道の日本社
『図解十四経発揮』 本間祥白著 医道の日本社
『島田隆司著作集』 日本内経医学会
『霊枢(最善本)』 日本内経医学会
『難経集註』 日本内経医学会
『わかりやすい小児鍼の実際』 谷岡賢徳著 源草社
『東洋医学と西洋医学』 谷美智士著 プレジデント社
『邪気論 見えない身体への一歩』 奥平明観著 医道の日本社
『中国刺絡鍼法』 譚徳福・郭剣華・尤慶文・王武興著 東洋学術出版社
『重廣補註 黄帝内経素問』 明朝嘉靖年顧従徳重雕版
『脉診 その手法と古典的背景』 船木寛伴編著 谷口書店
『脉診へのいざない』 船木寛伴著 たにぐち書店
『気流れる身体』 石田秀実著 平河出版社
『写真で見る 刺絡鍼法マニュアル』 日本刺絡学会編 緑書房
『脈状診のみかた考え方』 橋本正博著 医歯薬出版株式会社
『お灸で病気を治した話』 深谷伊三郎著 鍼灸之世界社
『日本腹診の源流 意仲玄奥の世界』 小曽戸洋監修 六然社
『鍼灸舌診アトラス』 藤本蓮風・平田耕一・山本哲斉著 緑書房
『鍼灸素論』 医道会・漢方古典研究会編著谷口書店
『口語 養生訓』 貝原益軒原著 松宮光信訳注 日本評論社
『血液の汚れを取るとなぜ病気が治るのか』 石原結寛著
《点字出版参考・引用文献》
{シンキュー イガク テンセキ シューセイより}
1--4 コーテイ ダイケイ ソモン
5--7 コーテイ ダイケイ レイスー
8--27 ナンギョー ホンギ タイショー
28--30 ミャッキョー
31--37 シンキュー コーオツキョー
38 シンカ スーヨー
     ミャッケツ
39 コーテイ メイドー キューキョー
40--41 ドーニン シュケツ シンキューズケイ
42--48 シンキュー シセイキョー
49 サツビョー シナン
50 シンキュー シューヨー
51 シンドー ヒケツシュー
     シンミャク クデンシュー
     シンキュー シナンシュー
52--53 シンキュー ヨーホー シナン
54 シンキュー ソカイシュー
55--59 マンギョー カイシュン ビョーイン シナン
60--61 マンビョー カイシュン ミャクホー シナン
62 シンキューソク
     シンキュー ゴクヒショー
     シンキュー チヨー 1ゲン
63 ミャクガク シューヨー
64--68 ケイケツ イカイ
68 メイカ キューセン
69--71 ケイケツ サンヨー
72 シンキュー セツヤク
73 ベッカン

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